国立博物館に着くと、問題が発生した。

英語を喋れないドライバーは、国立博物館の周りにいた英語を喋れるトュクトュク仲間を通訳に入れて『頑張った代』を請求してきた。
通訳ド 「俺は、道がわからなくて頑張ってアチコチ道に迷いながらもお前が行きたい場所に行った。その分、ガソリンも使った。って言ってるぞ。」
僕 「それはコイツが悪い。」
通訳ド 「頑張ったって言ってるぞ?可哀そうだろ?金を払ってやってくれ。」
頭にきたので、そのドライバーで空港まで行くつもりだったがその場で金を払って帰ってもらうことにした。
僕 「空港まで行かなくていいからここまでの金を払う。」
通訳ド 「よし、わかった。俺がコイツに話をつけてやる。」
プリプリ怒っているドライバーをたしなめる通訳ドライバー。
様子を見ていると納得したらしい。
お金を受け取り、去っていくドライバーの後姿は通算5オーバーという言葉がピッタリな気がした。
それを眺める僕と通訳ドライバー。
姿が見えなくなると、通訳ドライバーが話しかけてきた。
通訳ド 「アイツは駄目だ。俺ならアイツの半額で空港まで行くけど、どうだ?」
抜け目のなさに笑ってしまい、空港まで送ってもらうことにした。

カンボジア版、堀内孝雄。君のひとみは10000ボルトだ。
空港に着き、特にすることが無かったので煙草を吸うために灰皿を探す。
灰皿を発見するものの、バイクタクシーのドライバーがたむろしている。
煙草を吸っていると案の定、話しかけられる。
ド 「煙草を1本くれ。」
と言われ、煙草を差し出す。
ド 「これからどこかに行くのか?」
僕 「帰りの飛行機待ってるところだから、どこにも行かない。」
ド 「お前は、日本人か?」
僕 「そうだよ。」
ド 「俺は、行ったことはないけど日本が好きだ。」
僕 「そうなんだ。」
ド 「よし、じゃあ女の子のいるところに行こう。」
僕 「いや、いいよ。」
ド 「安いぞ?」
僕 「日本に帰る飛行機を待ってるんだってば。」
ド 「そうか、飛行機に乗る時間までどれくらい時間があるんだ?」
僕 「うーん、3時間くらいかな。」
ド 「じゃあ、大丈夫だ。よし行こう。」
僕 「だから、飛行機を待ってるんだってば。金も無いよ。」
ド 「よし、じゃあ違う話をしよう。時間もあるんだし。その前に煙草をもう1本くれ。」
悪びれず素振りもみせずに煙草を要求してくるので、面白くて煙草を渡す。
ド 「俺はなぁ、子供が3人いてな、俺の稼ぎで養ってるんだよ。」
僕 「そうなんだ。カンボジアの子供って可愛いよね。」
ド 「ハハ、ウチの子供は可愛いぞ。見たいか?」
僕 「写真持ってるの?」
ド 「そんなモノない。女の子の所に行くついでにウチに寄ろう。」
ドライバーの家に寄って、台所を借りて子供にパイナップル入りの肉じゃがを食べさせてやろうかと思った。
僕 「女の子の所には行かないって言ってるじゃん。」
ド 「わかった。俺がお前の分の金も出すから女の子の所に行こう。飛行機の時間には間に合うから。」
いくらなんでも嘘が解り易い。
さすがにここまでいくと潔い。
あまりの潔さに笑っていると、プノンペンに着いたばかりの観光客達が歩いてきた。
ド 「じゃあ、俺は仕事があるから。」
誘うだけ誘っておいてそそくさと仕事に戻っていった。
カンボジアのお父さんは逞しい。
飛行機に乗る時間になり、手続きを済ませて飛行機に乗り込む。
僕の席の隣は日本人の老夫婦。
しきりに周りの日本人に話しかけている。
僕にも話しかけたいのか、コチラの様子を伺っている。
疲れていたので、話しかけられないように外の景色を眺めていた。
体の向きを変えようとしたときに、肘が隣のお婆さんに当たってしまった。
僕 「ソーリー。」
大して英語を喋れるわけでもないのに、反射的に英語で謝ってしまった。
お婆さんは顔を少し強張らせ、軽く会釈をした後で隣のお爺さんに話しかけた。
婆 「隣の人日本人じゃなかったわ。」
爺 「ほら、俺の言ったとおりだろ。」
婆 「そうねぇ、私は日本人だと思ったんだけどねぇ。」
爺 「顔は日本人っぽいけど、雰囲気が日本人じゃないだろ。見りゃわかる。」
後に引くことが出来なくなり、日本に着くまで外人のフリをする事にした。
スチュワーデスに飲み物やご飯を頼む時も発音に気をつけた。
ス 「飲み物は何にしますか?」
僕 「Uh・・・ Beer。 Tiger Beer。」
ああ、いったい今僕は何人なんだろう。
疲れる。
成田に着くと、税関で引っかかった。
税 「むこうでマリファナ吸ってませんか?」
僕 「はい、吸ってません。」
税 「申し訳ないんですが、荷物を調べさせて下さい。」
バックパックの中身を入念に調べられ、灰皿の中身までじっくり確認される。
ああ、そういえばホーチミンで乗り換えのときも同じ事をされたのはこういう事だったのか。
無精髭で真っ黒に日焼けし、ボロボロの格好。
何となく、そう見えなくもないか。
兎にも角にも、無事帰国したのでした。

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